東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)173号 判決
一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、原告が主張する審決取消事由の存否について検討する。
1 構成上の容易推考の根拠について
(一) 原告主張の本願発明の特徴(ⅰ)について
成立に争いのない甲第二号証、第四号証、第五号証、第八号証によつて検討すると、本願発明における連結部材(41)に相当する引用例のヨーク50は、<い>(一方の車輛部分との連結の手段として、車輛部分16にキヤツプネジ66・66で取付けられたスピンドル60を収容する)ベアリングハウジング56を備えている。そして、二つの部材を相対的な回転運動ができるように連結する場合、連結部材に円筒状のものを設け、一方の車輛部分に取付孔を設けることは、成立に争いのない乙第一号証ないし第三号証に示されているように本願出願前慣用の技術であることが認められる。そうすると、引用例のヨーク50側に円筒状のものを形成し、一方の車輛部分16側に取付孔を形成して、本願発明における<イ>のように構成することは、設計変更程度の範囲内で、当業者が容易に実施することができるものとしなければならない。
また引用例のヨーク50は、<ろ>(他方の車輛部分との連結の手段として)本願発明における二組の連結腕に相当する第一組のラグ146・148と第二組のアーム190・190を有しており、本願発明における<ロ>の構成と実質的に相違はない。
(二) 原告主張の本願発明の特徴(ⅱ)について
前掲甲号各証によつて検討すると、引用例のものも、スピンドル60の内部に設けられたシヤフト88は車輛の駆動軸であるので、片寄つた位置にある一方のベアリング110・110のみで支持することは殆んど不可能であるから、技術常識上図示されていない他端がベアリングで支持されているものとみられる。そして、引用例のものは修理あるいは部品の取換を予定しているから、シヤフト88は取外しが可能のものと認められる。さらに、設置される二つのベアリングを同じ円筒部分の内部に設けることや、駆動軸の両側をユニバーサルジヨイントで接続することは成立に争いのない乙第七号証によつて示されているように本願出願前からの慣用技術であることが認められる。したがつて、引用例のシヤフト88について本願発明におけるのように構成することは、当業者が容易に実施することができるものとすべきである。
また、軸を支持する二組のベアリングを互に大小の関係の径のものとすることは、前掲乙第三号証及び成立に争いのない第四号証ないし第六号証によつて示されるように回転軸といえるものの支持手段であることが本願出願前において慣用手段であつたことが認められる。したがつて、この回転軸の支持手段を中空で内部に駆動軸を内蔵支持する連結部材である引用例のものに適用して、本願発明におけるのように構成することもまた、当業者が容易に推考しうるものであるといえる。
(三) 原告主張の本願発明の特徴(ⅲ)について
前掲甲号各証によつて検討すると、引用例のものも、スピンドル60はキヤツプネジ66を取外すことによつて一方の車輛部分16から脱離させることができるものであり、振動シリンダー200・200の設けられたクレビス198・198も後部12から分離可能なものと推認され(振動制限シリンダー200はクレビス198に枢着支持されるものであり、そして引用例のものは修理あるいは部品交換を予定しているものであるので、)、ラグ146・148もナツト170・172を取外すことにより後部12から分離可能であり、さらにシヤフト88も前後の車輛12・16から分離可能と推認され(シヤフト88が一方の車輛部分16から分離可能であることは前示認定のとおりであるから、これを前掲乙第七号証に示されるような機構のものとすることも当然考慮されるところであり、後部12からは、ユニバーサルジヨイント94・98により分離可能である。)、三者をそれぞれ分離して、あるいは結合したまま車輛から分離できることは明らかである。
したがつて、引用例のものもユニツトとしての連結装置であることにおいて、本願発明と実質的に相違するところはない。
そうして、前記(一)ないし(三)の認定事実によれば、原告主張の特徴(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)を備えた具体的結合として本願発明のように構成することは、引用例並びに慣用技術から容易に推考できるものと認められ、この点に関する審決の判断に誤りはない。
2 作用効果について
前掲甲号各証、乙号各証を総合して検討すれば、次のように認められる。
(一) 全体としてコンパクトな点について
本願発明も引用例のものも、前後の車輛の枢着点は連結装置の若干後方の、前者の垂直軸(16)、後者のピン53の部分であるので、駆動軸が傾動する部分も、この部分を中心とするエクステンシヨンジヨイント(63)(前者)、シヤフト96(後者)の部分であり、円筒部分(42)(前者)、スピンドル60(後者)の内部で傾動することはない。したがつて、引用例の図面明示のようにベアリングが一組でもスピンドルの円径は小径にでき、コンパクトであることにおいて本願発明と異なることはない。仮に差異があるとしても、ベアリングを二組とし、その両側にユニバーサルジヨイントを設けることは慣用技術であるので、その作用効果については予想できる範囲のものであり、顕著なものということはできない。
(二) 取付容易な点について
二組のベアリングを互に大小の関係の径のものにすることが慣用技術であつて、これを引用例のものに適用することの容易なことは前記認定のとおりであり、二組のベアリングを大・小の径にすることの第一の目的は取付を容易にすることにあることは明らかであるから、本願発明のこの点に関する作用効果は引用例及び慣用技術から容易に予想することができるものであり、顕著なものとすることはできない。
(三) 安定性に富み、バランスの取れた軸支持について
引用例のシヤフト88を対の二組のベアリングで支持するように構成することが容易であることは前記認定のとおりであり、かかる構成のベアリングによつて支持された軸が安定性に富み、バランスの取れた軸支持を可能なものとすることも当然のことであるので、この点に関する作用効果も顕著なものとすることはできない。
(四) 強度について
本願発明の構成において、車輛の後部(13)が地面に固定されたような状態で、連結部材(41)の垂直軸(16)側がこじられるような力を受けた時には、原告主張のように、連結部材(41)には垂直軸(16)に近い側で大きな応力の発生をみる。
しかしながら、これとは逆に、前部(12)が地面に固定されたような状態で、ハウジング(47)の垂直軸(16)から遠い側がこじられるような力を受けた時には、垂直軸(16)に遠い側で大きな応力が発生することとなる。
したがつて、連結部材(41)は、両側共、その両方に力を受けたときの最大荷重に耐えるような肉厚が要求され、垂直軸(16)側のみを肉厚としても無意味である。
そして、仮に垂直軸(16)に近い側にのみ大きな応力が発生し、連結部材(41)のその部分を肉厚にしなければならないとすると、その場合、当然のこととして、ハウジング(47)の垂直軸(16)に近い側も同じ大きさの応力が発生していることになるので、ハウジング(47)の垂直軸(16)に近い側も肉厚にしなければならない筈である。
しかしながら、本願発明においては、これら肉厚の程度、相互の関係について構成上何らの限定を加えておらず、その実施例を示す図面では、ハウジング(47)の垂直軸(16)側は肉薄に形成されている。
いずれにしても、この点に関して原告が根拠とする作用効果の主張は明確な根拠を欠き、俄かに認定し難いところである。
(五) 互換性について
前記認定のとおり、ユニツト式連結装置であることにおいて、本願発明と引用例のものとは実質的に相違するものではないから、これに基づく互換性に関する作用効果についても格別の差異はないものといわなければならない。
そうすると、本願発明の作用効果は顕著なものとはいえず、その進歩性を否定した審決の判断に誤りはない。
三 以上のとおり、審決には、原告の主張するような判断の誤りはないから、これを理由としてその取消を求める原告の請求は失当として棄却する。
〔編註その一〕 本願発明の要旨は左のとおりである。
中央の垂直軸(16)を中心とする二つの車輛部分(12)、(13)の屈曲動作を許容する連結部材(41)を備えた連結装置(14)であつて、
前記連結部材(41)は、二つの前記車輛部分(12)、(13)間における相対的な回転動作を許容するために、一方の前記車輛部分(13)に設けられた長さ方向に延びる取付孔(46)の内部において、長さ方向に間隔を保有する一組のベアリング(43)、(44)により設置された円筒部分(42)を有しており、それらのベアリング(43)、(44)は、前記連結装置の小型化を図るために、比較的大径に形成されているとともに、互いに近接して配置されており、前記ベアリングの中の、前記垂直軸(16)に近い側のベアリング(43)は、一方の前記車輛部分(13)に対する前記連結装置(14)の取付けを容易にするために、その反対の側のベアリング(44)よりも大径になつており、
前記連結部材(41)は、直径方向に対向する第一組の連結腕(48)、(49)と、これらの連結腕に対して周方向に偏倚した位置を占め、かつ直径方向に対向する第二組の連結腕(53)、(54)とを有しており、第一組の前記連結腕(48)、(49)は他方の前記車輛部分(12)上の対応個所に枢支連結されているのに対して、第二組の前記連結腕(53)、(54)は、操向用動力手段(26)を介して他方の前記車輛部分(12)に枢支連結されており、
さらに、前記連結部材(41)は、二つの前記車輛部分(12)、(13)間における相対的な回転動作を制限するために、一方の前記車輛部分(13)上の制止手段(77)、(78)と係合可能な第一制止面(76)、(76)を有するとともに、他方の前記車輛部分(12)上の制止手段(82)、(83)と係合可能な第二制止面(81)、(81)を有しており、
前記連結部材(41)における円筒部分(42)の外周面と、一方の前記車輛部分(13)内の取付孔(46)の形状は、前記円筒部分(42)を前記取付孔(46)内に支持するための外径が異なつている前記ベアリング(43)、(44)を収容することができるように階段状に形成されており、
しかも、前記連結部材(41)の中心部には、ベアリング(57)、(58)によつて駆動軸(56)が設置されており、この駆動軸(56)は、分割された複数の駆動軸(64)、(67)に対しユニバーサルジヨイント(61)、(62)、(66)によつて接続されていることを特徴とする連結型車輛のユニツト式連結装置(別紙一参照)。
〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。
別紙一
本願発明
<省略>
<省略>
<省略>
別紙二
引用例
<省略>
(以下省略)